読み合いの考え方

最終回の(予定の)記事です。

大体 さんすう の話です。そして長いです。

 

 

これまでは前置き

前回までの3回は、doa攻略と言うお題目で「だいたいこうやれば、こう考えれば勝ちやすいよ」的な内容の記事でしたが、数ある戦術をどのように組合せて運用するかが最終的には重要になると思います。その戦術の組合せ方について自分なりの考えを述べていきます。

 

強さの定義

対戦ゲームをやっていて多分誰しもが「強くなりたい」「上手くなりたい」「勝ちたい」という思いを胸に抱くことは少なからずあると思います。しかし「(対戦ゲームで)強い」という状態の定義がなされないままでは、どうやって強くなればいいのか方向性が見えないのではないでしょうか。これに対する解答を自分は先に見つけ、それを証明したい、という思いがdoaにおける全ての行動の起算点であったように思います。

 

勿体つけるほどのものではないんですが、自分の「強さ」の定義とは「勝率の高さ」です。強いイコール勝率が高い。つまり、勝”率”が高ければ強いということは、何らかの確率を用いた手法(統計や解析など)によって勝率を上げていくのが最も近道ではないのか、と考えたわけです。

 

以前対戦会なんかで「ミッチーさんって優勝したとき泣かずに淡々としてたよね、人間の血、通っておらず?」みたいなことを数回聞かれたことがあるんですけど、自分が優勝したときの気分って「やったーー!うれピーー!(涙ダバー」よりは「良かった...考えていたことは間違っていなかった...」という安堵の気持ちの方が大きかったです。試験の自己採点でまぁまぁ満足のいく点数だったような気分、と言えばあるいは卑近でしょうか。(というかいろんなゲームの世界大会の動画見たりするけど、そもそも泣くほうが圧倒的に珍しくない?)

 

あと補足しておくと、自分の定義では強さには2種類あって、「競技種目における強さ」と「一発勝負における強さ」があって、前者は上述の通りですが後者は言い換えれば「想定の深さ」だと思っています。これも説明すると長くなるのでそれはまたの機会に。

 

読み合いの比率

 話は変わりますが、つい数か月前SoulCalibur6が発売され、自分も対戦会に参加して少しキャリバー勢の方と繋がりができて、ツイッターで対戦ゲームの考え方について見る機会ができました。その中でdoaと文化の違いを感じた部分があって「キャリバーは読み合いよりも、対策と練習によってカバーできる部分で勝負するゲームであるべきだ(読み合いジャンケンポンで大ダメージ、よりは反応速度や練習の熟練度でダメージが左右されやすいゲーム性であるべきだ)」というニュアンスの意見を目にしました。それについては人によって意見が分かれる部分ではあるので、あまりそれが良いとか悪いとか言うつもりは無いし「あー確かに、そういう考え方もあるんだな」くらいに自分は思っていました。そして同時に、doaって読み合いでダメージをやり取りするのが殆どだな、と思いました。ここで、どっちのゲームが優れてるとかダメだとか言うつもりは全く無いんですが、知識量や反射神経に比重を置くのか読み合いに比重を置くのかについては、どちらも長所短所があるので「まぁどっちか好きな方のゲームやればいいんじゃない」的な結論にしかならないと思うので深くは言及しません。結局何が言いたいのかと言うと、doaというゲームで強くなりたいなら読み合いの判断はゲームの大部分で避けられない問題だし、そこを効率的に勝てるようにすれば勝率も上がる(イコール強くなる)のではないでしょうか。

 

読み合い(グリコジャンケン)

多分誰しも一度くらいはやったことある遊びだと思います。神社の石段などでジャンケンして、グーで勝てば「グ・リ・コ」、チョキで勝てば「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」、パーで勝てば「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」の文字数だけ進んで先にゴールしたほうが勝ちというゲームです。ここでwikipediaの引用ですが、これには必勝法的なものが一応存在します。長い目で見れば負けない、と言った類のものですが。

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ウィキペディアより引用

少し噛み砕いて言うと、自分が勝って3ないしは6歩進むことを「得点」とし、相手が勝って同じように進むことを「失点」と定義し、最終的な得失点で勝ち負けが決まるゲームの最適戦略について書かれています。これって格ゲーとほぼ一緒じゃないですか?自分が読み勝ってダメージを取れば「得点」、逆に読み負けてダメージを取られたら「失点」となり、どちらかの得点が一定値に達すれば勝ち負けが付く、というものです。流石に全部が読み合いではなく技術介入の余地があるから一概に全てがそうだとは言い切れませんが、読み合いの部分に関してはこれが自分にとっては一番しっくり来る例えでした。

 

そしてwikiをよく読むと抜粋部の最後に「実際にこの遊びで勝ちたい場合は、まず上記のナッシュ均衡通りに手を出して相手の出す手の割合を観察し、 相手がナッシュ均衡に従っていない場合はそれに従って出す割合を変更すれば良い。」とあります。つまりナッシュ均衡とは「絶対に引き分け以上になるジャンケンの出し方」であり、相手の出す手に偏りがある場合はそれに合わせて出すグーチョキパーの割合を変えれば良い、ということですね。

 

計算例

上述でグリコジャンケンにおける(長い目で見た)必勝法を紹介しました。ここからは実際に自分がやっていたものを少し単純化した計算について説明していきます。ここから先は数式やら計算の説明になるので読むのが正直結構ダルいかと思いますが可能な限り説明していきます。

 

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まず、ナッシュ均衡は計算できません。最適戦術を導く初めの部分で躓いて申し訳ないんですが 、単純な計算(お互い2・3種類しか手が無い場合)の場合は出るんですが、状況が複雑になればなるほどナッシュ均衡が出現する確率は低くなります。(多分対称行列とかになれば出るんじゃないかな...)

ナッシュ均衡の計算方法はwikipediaにもありますが一応説明すると、すべての連立方程式の解がゼロになる場合の各数値を導くが、ゼロ行列に何をかけてもゼロになってしまうので、任意の未知数に任意の実数を代入して解く、というのが解法になります。左上の黄色で塗りつぶした範囲が6次の行列になっていて、どれかに1を代入したときの5次の逆行列を作ってやって(左下の黄色の部分)あとは解と逆行列をかけ合わせればナッシュ均衡の解が出ます(出ない)。(このへんの上手い処理の仕方を知っている人がいらっしゃれば教えて欲しいです。自分の知能では無理でした。)

 

まぁいいんですよ。出ないなら手動の試行錯誤で探してやれば。

 

この例は試合開始時のお互い五分状況で、ハヤテとかすみの行動がかち合ったときのリスクリターンを計算したものになります。左上部薄緑色に塗った部分がそれぞれのキャラが取りうる可能性の高い選択肢で、勿論、この部分を自分の好みで書き換えることは可能です。他にもこんな選択肢あるんじゃない?と思うかもしれませんが、これは例として単純化したものを示しているのでご了承下さい。そして、左上表の黄色く塗りつぶした部分が得失点を表しています。この得失点はハヤテ側から見たもので入力しています。例えば一番左上、お互いP連携同士がかち合った場合、発生の速さでかすみ側が勝ち、そこから多彩な連携で攻められて投げやコンボで平均40くらいのダメージを負うのではないか、と言う「仮定」で「-40」と入れています。ここでも「いや俺かすみのPからの連携とか全部ガードして投げれるしw」と言う人は「40」と入力して大丈夫だと思います。勿論考え方は自由です。一応、この表では「有利な状況になってなんらかの択をかけられる場合は有利側に40点の得点」「カウンターを取れる場合はホールドなどによるコンボ失敗も平均して考えて70点の得点」「ハイカウンターを取った場合、カウンター時と同様にコンボが失敗する可能性も平均して考えて90点の得点」という法則で概ね入力しています。

 

そして、肌色(薄い赤色?)に塗った部分がそれぞれの行動を選択する配分、パーセンテージです。確率×変数(この場合では得点)で期待値が出るので、それぞれのハヤテ側の選択肢の期待値をネズミ色で着色した部分にまとめています。最終的な得失点は一番右端の表に出ている通りで、合計値のセルを赤く塗っていますが得失点差で大幅にマイナスとなっておいるので、このままの配分では五分状況で負けてしまいやすい、という結果が得られます。

 

じゃあ負けない技選択の配分はどうなるのかと言う問題ですが、単純に考えれば期待値がマイナスを示している行動をやめて、期待値がプラスになている選択肢を取れば得失点差はみるみる内にプラスに転じるのは言うまでもないと思います。で、期待値がプラスになっているハヤテ側の行動って1Kだけですね。じゃあ、五分の状況では毎回1K打ちましょう、となるかと言えばそうはならないと思います。そんなことしたら流石にかすみ側も、肘や様子見からの投げで対応してくるでしょう。

 

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上の画像は相手(かすみ側)が対応してきた場合を想定した計算になります。この場合では1Kの期待値が暴落しているのがわかります。そして今度はP連携の期待値が上がっていますね。確かに、かすみ側の選択肢で肘や様子見が増えればこちらのP連携が通りやすくなり、そこから択をかけていくチャンスが訪れます。

 

と言った具合に、自分がこう動けば相手はこう対応してくるだろう、と何パターンか相手の行動の偏りを予測しそれらの変化に対してまんべんなく対応できる技選択の配分を見つけ出すことが大切になります。具体的にここでやることは、ハヤテ側の行動の発生確率をなるべく固定し、相手側(かすみ側)の行動が数パターンに変化したときどれにも対応しやすい技の振り方の配分を見つけます。つまり、疑似的なナッシュ均衡を気合と根性で探し当てる、という作業を行います。

 

え~ここまでやるの~別に対戦してればなんとなくわかるっしょ~、と言う人は勿論それでいいと思います。この方法は、少なくとも自分が勘や経験でどうにもすることができなかったのでこう言うやり方を作り出した、というだけのものです。またこの例は、何らかの解答が得られたとしてもあくまで「五分状況における行動の解答」というだけで、他にもフレーム有利な場合、不利な場合、クリティカルを取った場合、取られた場合など考慮すべき状況は無数にあるかと思います。それら全てを解析してやっと対策完了、というのが自分なりに考えた読み合いで勝つための方法です。

 

自分語り

ここまで説明すればわかると思いますが、つまるところ、自分の格ゲープレイヤーとしての最大の特徴は数理的な根拠に基づいた内輪読み、でしかありません。この方法には大きな弱点が2つあって、まず1つめは当然初見の相手に通じないということです。あと2つめは(これは弱点かどうか怪しいけど)対応策がわかっていたとしてもそれを実行できるとは限らない、という点です。これは自分の練習の絶対量が少ないという理由に尽きるのですが「これさえできれば、この状況をクリアできるのに…!」というのは沢山ありました。しかし無い物ねだりをしても仕方ないのでひたすら他の方法での対応方法を模索するしかありません。

 

先に弱点を説明しましたが、少なくとも1つめの弱点がクリアされる状況はありますよね。例えば、出場者が全員判明している全国大会などがそうです。これまでの対戦経験から有効な立ち回りを全員分解析して試合に臨めばあるいは技術的に中程度のプレイヤーでもワンチャンス、優勝をもぎ取ることが可能になるのかもしれません。まぁ出場者全員分解析して勝とうとか、根暗オブ根暗もいいとこなのでオススメしていいか若干迷いますが。

 

何度か申し上げましたが、勘と経験でどうにかなる人は別にこんなややこしいことやらなくてもどうにかすると思います。しかし、doaシリーズの経験がそこまで長いわけでもなく(少なくとも自分はdoa4のシーンの中~終盤に登場したプレイヤーです)格闘ゲームに於けるわかりやすい意味での才能(反応速度や相手の嫌がる行動を察する力など)も乏しかった自分が最終的に編み出した方法はこの記事で紹介した通りです。

 

実際はこれをもう少し複雑にして、状況別にシステマチックに整理できるようにしたものが自分の最終的なスタイルです。

 

最後にメンタルケア

 勝負事を長い時間やってると負けが込んでメンヘラになった(あったまった)経験の一度や二度は誰もが経験があるのではないのでしょうか。ポーカーでは「ティルト(tilt、直訳すると”傾く”の意)」という用語があって、運の悪い状況が連続するなどして精神的に参ってしまって正しい判断ができなくなってしまったプレイヤーの状態をそう呼びます。

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そして自分の経験も含めて言うと、そういうときにこそ数字による根拠が精神的な助けになると思います。仮に、数字的な根拠が無いとすると、格ゲーで負けが連続するとき自分が正しい行動をやってるのに運が悪くて(たまたま連続で読み負けて)負けてるのか、自分の行動選択の配分に問題があって負けてるのかってわからないんですよね。

 

だから、そういうときに落ち着いて解析してみるとどちらの状況に自分がいるのかが判別できて、運が悪いだけならこのままで、行動配分が悪いのなら次からこうしよう、とか何らかの希望が見えて「なるほどな、よし...次頑張ろう!」となるケースが多かったです。数字的根拠はメンヘラガードになります。

 

以上で自分の説明は終わりです。割と説明が雑な部分もあるので、わからない部分はツイッターやコメントで質問してください。

 

これから、doa6では、doa6こそは、と思う人の力になれば幸いです。健闘を祈ります。

 

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